【最愛のペットちゃんの弔い方法の現状 】ペットが亡くなった後どうしてる?
ペットちゃんとのお別れの際、弔いの方法にはいくつかの方法があります。
しかし、ペット葬儀社に長年携わる者として、実際はペットちゃんを亡くされたご家族がどういう方法での弔っているのかを把握することが難しい状況がありました。
この記事では、大手ペット葬儀サイト様の記事や新聞等の記事を参考にペット葬儀の現状について考察した内容をまとめました。
ぜひご一読ください。
執筆者
16歳で出家し22年、小坊主から修行し僧侶として18年。2016年にペット葬祭事業を個人事業主として立ち上げ、2020年に法人化。お坊さん兼会社の代表として二足の草鞋を履きながら累計6,000件以上ペット火葬に従事。2022年にペット霊園を開設、僧侶としても日々、修行中。
ペットちゃんが亡くなった後の選択肢
最愛のペットちゃんが亡くなった後、幾つかの選択肢があります。
①市の環境局へのお引き取り依頼
②民間のペット葬儀社への委託
③敷地内への埋葬
現在は他にも色々な弔い方がありますが、多くの方が上記いづれかの方法を選択しています。
しかし、実際はご家族がどのように弔っているのかはわからない状況でした。
唯一、この割合を知る参考になったのが「ペット葬儀マップ」様が2020年7月に集計された、
「ペット火葬・葬儀業者はどのようして探してる?【1000人アンケートからの考察】」の結果でした。
この記事の中で、上記で述べた選択肢の割合は、
①市の環境局、クリーンセンターへの引取り35%
②民間のペット葬儀社65%
③ご自宅・敷地内の土葬(こちらはアンケート候補になし)
という結果になっておりました。
しかし、上記のアンケートは、あくまでも1000人の統計となっているため、実際の割合はどうなのだろうか?
そんなことを考えている中で、一つの指標になる新聞記事を見つけたのでご紹介したいと思います。
記事は「兵庫県尼崎市での環境センターの取り組みを変える」という内容でしたが、私が着目したのが「2022年度は、猫101匹、犬73匹、その他ウサギやインコ、カメなど計38匹を引き取った」という尼崎市が受け付けたペットちゃん達の数でした。
この尼崎市が取材に対して公表した数字を元に、市の環境局、クリーンセンターに引き取られる数値を割り出してみると、
まず、注目すべきは犬ちゃん、猫ちゃん。
一般社団法人ペットフード協会様が毎年公表されている「全国犬猫飼育数実態調査」によると、
2022年度は、犬ちゃんが705万3千頭、猫ちゃん883万7千頭とあり、全国で犬ちゃん猫ちゃんの飼育総数は1589万頭となっています。
そしてこの数字を基に1年間に亡くなる頭数を平均寿命より割り出してみます。
犬ちゃんの平均寿命は平均14.76歳(大型犬・中型犬・小型犬で差あり)
猫ちゃんは平均15.13歳(外に出る子、家だけに居る子で差あり)
(全国犬猫飼育数実態調査2022年度より数字は引用)
上記の数字を飼育数で割ってみると、
犬ちゃん、猫ちゃん合計で、1年間で約106万1917頭が亡くなっている計算となります。
(犬ちゃん47万7846頭、猫ちゃん58万4071頭)
日本の2022年度の総人口は約1億2494万7千人で、118人の日本に住む方がいれば、その中の1人は犬ちゃん、猫ちゃんを亡くされていることになります。
記事の尼崎市の人口は2021年の集計で約45万8,800人。その数字を基に考えてみると尼崎市では人口に対して3,888頭の犬ちゃん、猫ちゃんが22年度に亡くなっているとのではないかと推測できます。
そしてこれを、尼崎の環境局が公表した犬ちゃん猫ちゃんのお引き取りした総数174頭に当てはめると、
尼崎市では、約4.5%の方が「市の環境局へのお引き取り依頼」をされている
という計算になり、
他96%の方は民間のペット葬儀社か自宅か敷地に埋葬していると考えられます。
埋葬に関しては、都市部になればなるほど、埋葬する十分な敷地が無いため、民間ペット葬祭業社への依頼が増え、埋葬する土地が確保し易い地方ほど土葬が増えると思います。
ただ、私がこれまでペット葬に携わった経験からみても、地方でも直接土葬するのではなく火葬した後、ご遺骨を埋葬する方も多い印象です。
ペットちゃんのご遺体問われる自治体の対応!?
今回の記事の内容は、「尼崎市の環境局が従来の対応を改めて、ペットちゃんを亡くされたご遺族に配慮した対応を目指す」といった内容になります。
今までは、行政として「公衆衛生の為」「モノとして」対応していた亡くなったペットちゃん達のご遺体。
行政・自治体がペットのご遺体をどう扱うべきか?
この問題は今後少なからず全国で大小さまざまな議論を招きます。
一ペット葬儀社として、現場からの視点で解説したいと思います。
亡くなったペットちゃんは“モノ”なのか、それとも“ご遺体”なのか?
兵庫県尼崎市の環境局・クリーンセンターの場合、体重は関係無く、手数料として一律税込2,700円です。
これは、ご遺体を“モノ”として処理させて頂く事で実現できる形になります。
今回「愛犬をモノ、ゴミ扱いされる事に抵抗がある」という事で、尼崎市ではこういった声に応える形で改善策を行ないました。
「4月からは、市業務課内に職員3人を配置。職員が直接訪問してペットを引き取り、手数料は現金で受け取ることにした。新年度予算案に、回収用の軽乗用車のリース代などとして65万円を計上している。」と記事の中でこう紹介されています。
この改善案は、ご要望に寄り添った形かと思います。
ただ、今度はこういった声が出て来ます。
「ペットを飼育する特定の市民にのみ、利便性を提供するのは公平な行政として正しいのか?」
どこの自治体でもそうですが、お住まいの住人はペットちゃんを飼育されている世帯もされていない世帯もあります。
内閣府発表の「平成22年9月 動物愛護に関する世論調査」では、
ペットを飼育されている世帯は36.7%で、飼育されていない世帯は63.3%となっており、調査年より10数年以上経ち、ペット飼育世帯数は増えたといっても、国民の半数以上はペットを飼育されていない現場があります。
ここに少子高齢化、人口減少、高齢者の増加による社会福祉費の増大と日本全体で抱える状況があります。
簡単に言えば、これから先、自治体の収入は減少し続け、支出が増える時代が待ち受けています。
お金が無い、そして限られたお金を重点すべきところに回す。
この中で、特定の利益者しかいない、亡くなったペットちゃんへの対応予算。
尼崎市は、新たに3人の人員を配置し、車両も65万円で導入するとのこと。
兵庫県の平均年収は476.8万円(統計局ホームページ/統計データ(stat.go.jp)総務省統計局より引用)です。
3人分の人件費で約1,430万円、受付用の車両リース代65万円を合わせると、1年間で計1,500万円ほど予算が必要になるのです。
記事に「2022年度は、猫101匹、犬73匹、その他ウサギやインコ、カメなど計38匹を引き取った」とあるように、今後も同じ件数で、費用が2,700円のままだとすると
1年間の行政への収入は57万2千4百円。倍に増えたとしても約120万円。
果たして、ここに人員を割くべきか否か。
今後必ず問題になる理由が既にある訳です。
最愛のペットちゃんを送るご家族様の想い。
行政、自治体がどんなに先進的に取り組んでも、解決できない問題があります。
それが、最愛のペットちゃんを見送るご家族様のご希望が千差万別だからです。
一昔前、4万、5万と高額だった民間のペット火葬費用は現在ここまで価格が下がっております。
上記は、弊社グループ「大阪ペット葬祭・光堂」の料金表となりますが、弊社以外にも全国には価格を抑え365日夜間、深夜まで対応する民間のペット葬儀社があります。
これら利便性が高い民間のペット葬儀社に、合わせると行政はさらに人員の増加が必要になります。
また、ペット葬には、多様なサービス、お別れの形も次々と登場しています。
弊社でもオプションとしてご費用をご負担いただけますと、綺麗に飾ってご家族様オリジナルの形で送り出せる「ハートフルプラン」というサービスもあります。
周囲の目、対面の問題
最愛のペットちゃんとのお別れ。どうするかは人それぞれ価値観が違います。
お金を惜しまず行なう方もいますし、ある程度は負担して自分たちで希望するお別れを選択する方もいます。
そして、環境局・クリーンセンターで問題無いと考える方もいます。
昔は、環境局、クリーンセンターでも問題はありませんでした。
それは、ペットちゃんを亡くされたご家族様に今のように選択肢がなかったからです。
当時は、5万、10万と足元を見るかのような高額な費用を請求するペット斎場ばかりだったので、そこまでは費用を捻出できない方も多く「仕方ないよね」と周囲の目や理解もありませんでした。
全国の最低時給が700円だった時代に5万円、10万円も請求するペット葬儀社。
現在は全国最低時給が1,004円(2023年)で2万円以内に納まる場合も多い。
昔は、ご家族様側が凄く大変な負担をしなければ、ペットちゃんの最後を民間の葬儀社に依頼できなかった訳です。
しかし、ペット葬儀社の増加、価格が適正価格まで下がってきた事。
動物愛護に含まれるかわかりませんが、最後まで出来る限りしてあげたい。
負担が下がり、多様なサービスが増え、環境局・クリーンセンターにお任せする理由が大きく減っているのが昨今です。
「本当は、環境局、クリーンセンターに引き取って貰えば良かったけど。ご近所さんの目も怖いからね。」
そう言った声も実際に少なくありません。
多くの方が抱く、環境局・クリーンセンターへのイメージ。
『モノとしてだけど、安い費用負担で引き取ってくれる』
良くも悪くも世間に定着しているイメージがある為に、実際は利用したくても、周囲に何を思われるか、何を言われるか、わからないから、依頼したくても依頼できない事情があるのです。
まとめ
平成22年度(2020年)14年前の内閣府の調査では、ペットちゃんを飼育されている世帯は36.3%。
この時、2010年全国の犬猫飼育数は、犬ちゃん1186万1千頭、猫ちゃん961万2千頭でした。
それから10年以上が経過し、2022年度は犬ちゃんが705万3千頭、猫ちゃん883万7千頭と、比較をすれば、犬480万8千頭、猫ちゃん77万5千頭も減っています。
(一般社団法人ペットフード協会全国犬猫飼育数実態調査より引用)
犬ちゃん猫ちゃんでなく、ハムスターちゃん、ウサギちゃんなど様々な種類が増えているとしても、やはりペット飼育世帯数は全国的に減っている実情があります。
また、ペットちゃんが亡くなった後低価格化、サービスの多様化で自由に選択して最後のお別れをしたいご家族様が過半数を超えます。
そして、自治体・環境局をご利用した方も、ペットちゃんを送った後は飼育しない市民になります。
自分たちに関わりがより高い、社会福祉費に予算を回せと望む方もいます。
市町村・自治体が「亡くなったペットちゃんへの対応」に力を入れる事は、色々な事情から難しいだろうと私は感じています。
今回の「読売新聞オンライン」の記事を読み、私自身が尼崎市での取り組み、現場でご遺族様と向かい合う立場から執筆しました。
行政、自治体が「公衆衛生の範疇を超えて活動」はハイリスク、ローリターンではないかと個人的には思います。
尼崎市の取り組みは、本当に素晴らしいのですが、結局は自治体の税収と予算と優先順位。
予算が潤沢な自治体ならまったく問題ありません。
愛護精神にも関わる良い取り組みだと誰もが評価します。
しかし、予算がカツカツ、財源が限られる状況になれば廃止するしかない訳です。
身も蓋もない事を言えば、多くの市民に評価、支持して頂ける政策でもない。
そして、始めたらどこかで廃止するまで予算が必要となり、廃止の際は「何でこんな事始めたんだと」責任問題にもなりかねない。
この記事を執筆している2024年2月時点で、警鐘はさせて頂きました。
少しでも参考にして頂ければかと思います。数値は、確認して頂けるよう引用先としてリンクも張っております。
実態、全容が、わかりづらい世界です。
今回、尼崎市さんが全国に先駆けて取り組んでくれたおかげで読売新聞社さんの取材記事となり、実際の受け付けた数値を元に分析できました。
ペットちゃんのご遺体をどう行政として位置づけ扱うべきか。
この問いへの答えを導き出す大きな判断材料になる事は間違いありません。
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